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所蔵図書・資料の紹介

I  所蔵図書・資料の概要


1.【図 書】

 現在,大原研究所が所蔵している図書は,内容的に多様であるだけでなく,入手経路もさまざまである。そこで,その入手経路を説明することで,研究所の蔵書構成を説明することにしたい。

 いうまでもなく,蔵書の中心は当研究所が直接収集したものである。大原社会問題研究所は1919年の創立直後から図書の収集,とりわけ外国書の収集に力をいれた。1920年から21年にかけて,大原孫三郎はドイツ,イギリスをはじめとする欧米各国に研究員を派遣し,図書や逐次(定期)刊行物の収集にあたらせた。とくにドイツでは,第一次世界大戦での敗北による混乱から大量の図書が市場に出まわっていた上に,空前のインフレによる円高・マルク安もあり,多くの貴重書や新聞・雑誌を入手することができた。なかでも,パウル・エルツバッハーから一括購入したアナーキズム関係図書は,著名な研究家が集めたものだけに世界でも有数のコレクションで,大原社研が国内で集めた日本の無政府主義関係書とあわせ,質量ともにすぐれた収集となっている。和書についても,新刊書を日常的に購入しただけでなく,関東大震災直後には,図書価格の高騰を見越して,関西地方でまとめて古書を収集している。

 しかし,このようにして集めた図書のうち経済学の古典を中心とする約8万冊は,1937年に研究所が東京に移転した際,大阪府に譲渡され,さらに敗戦の年の5月の空襲による火災で,淀橋区柏木(現在は新宿区北新宿)にあった研究所の事務所と書庫が類焼し,当時の新刊書を中心とする蔵書の一部を失った。しかし,社会主義・社会思想関係の貴重書や,社会運動・労働運動関係の原資料や裁判記録など,所蔵文献中でもっとも貴重なものは,強固な土蔵に収納されていたため焼失を免れた。

 戦後は,限られた予算であるが,労働問題関係図書を中心に収集につとめた。戦前との大きな違いは,購入書より寄贈書の比重が高まったことである。「労働問題文献月録」や「労働運動史文献目録」を編集していることで,大原社研が労働関係図書の収集に当たっていることを多くの機関や個人が知ってくださり,その方々の協力で,多数の図書の寄贈を受けてきた。とくに労働組合史や社会運動家の伝記・回想記などは,非売品や私家版で一般の書店には出ないものが多く,当研究所の蔵書構成をユニークなものとしている。

 寄贈といえば,この間に大原研究所は2つの大型コレクションを受け入れ,その蔵書は質量ともに飛躍的な発展をとげた。協調会文庫と向坂文庫がそれである。

 協調会文庫は,もともとは財団法人協調会付属図書館の蔵書である。財団法人協調会は,大原研究所と同じ1919(大正8)年に,労資協調の促進を目的に政府と財界によって設立された半官半民の団体で,そうした立場から,労働問題に関する調査研究をすすめ,多くの図書・資料を集めた。戦後,協調会は占領軍によって解散させられたが,図書など,その資産は学校法人中央労働学園(中労)に帰属した。 1951年,中央労働学園の経営する中央労働学園大学の法政大学との合併にともない,その蔵書は法政大学に移管され,「協調会文庫」として大学付属図書館の管理下に入った。そのため,利用者の間から,大原社研の蔵書と協調会文庫とを一箇所で閲覧できるようにしてほしいという希望がしばしば出されていた。 1960年代末に両コレクションの主要部分の整理が終わり,さらに,たまたま大原社研の蔵書と協調会文庫とが,ともに法政大学麻布校舎に移ったのを機にこの懸案は解決した。 1973年12月に両者の協同利用機関として社会労働問題研究センターが生まれ,その管理を大原社会問題研究所が担当することになったのである。

 向坂文庫は,マルクス経済学者の向坂逸郎氏のコレクションを,1985年に,ゆき夫人から寄贈されたものである。戦前は「労農派」の論客として健筆をふるうと同時に,世界最初のマルクス・エンゲルス全集を編集し,戦後は社会主義協会代表として日本社会党の理論的指導者のひとりであった向坂逸郎氏は,愛書家としても著名で,その生涯を通して膨大な図書・資料を集めた。その分量は雑誌やパンフレット類も含め約7万点,図書だけでは和書が約2万冊,洋書が約1万冊で,おそらく一個人のコレクションとしては世界最大規模であろう。マルスク経済学に関する図書を中心に,歴史・文学など幅広い分野の図書が集まっている。「文庫」の中に,日本の社会主義運動の父ともいうべき堺利彦の旧蔵書が含まれているのも貴重である。

 そのほか大原研究所は,高野岩三郎氏,大山郁夫氏,鈴木茂三郎氏をはじめとする多くの社会運動家や研究者の旧蔵書を個人文庫として受け入れている。

(二村一夫・若杉隆志)

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より


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