二 村 一 夫 著 作 集



『労働は神聖なり、結合は勢力なり
        ─ 高野房太郎とその時代 ─
(岩波書店,2008年9月刊)

  の相互補完本

 ここは、岩波書店から2008年9月25日に刊行された『労働は神聖なり、結合は勢力なり── 高野房太郎とその時代』との相互補完的な「ウェブ本」です。一般に「サポートページ」と呼ばれるものですが、活字本を補完するのが主目的ではありません。活字本とウェブ本が、それぞれ独自の役割を果たしつつ、たがいに補いあうことを意図しています。
 もともと『労働は神聖なり、結合は勢力なり』は、本サイトに連載した『高野房太郎とその時代』をもとに書き下ろしたものです。ウェブ本執筆の過程で、本サイトは、数多くの高野房太郎関連史料や研究文献を公開してきました。ここは、そうした房太郎関連諸情報への解説つき総目次です。諸情報について簡単に解説すると同時に、元データにすぐアクセス出来るようにしてあります。
 なお、活字メディアでは、岩波文庫の高野房太郎著『明治日本労働通信──労働組合の誕生』が、英文通信や英文書簡の翻訳もふくめ、房太郎執筆論文の大半を収録しています。本サイトとあわせてご利用ください。
 


オンライン版『高野房太郎とその時代』総目次

これは活字本のもとになった、オンライン書き下ろし版『高野房太郎とその時代』の総目次です。見出しをクリックすれば、総目次があらわれます。活字本ではすべて省略した【注】をたどると、参考文献や史料の出所などを見ることができます。また、カラー画像をはじめ、図版はオンライン版の方が豊富です。


フォト・アルバム:写真による高野房太郎伝

画像は史料としてもきわめて有力なものです。そうした画像データを数多く、しかも大判の精密画像として提供できるのは、ウェブ本ならではの利点です。そこで、あらたに、画像データによって高野房太郎伝を補完する企てをたてました。まだ始めたばかりですが、おいおい追加して行きます。

回想記・追悼記など

 高野房太郎の全生涯を伝える伝記的な文献は皆無です。それに代わるのが、ここに紹介する弟・岩三郎が残した回想記です。岩三郎は、兄の「伝記編纂の宿志」をいだいており、兄の手紙やゴンパーズから房太郎宛の書簡などを「手許に保存」していただけでなく、簡単なものですが房太郎の生涯について3点ほど書き残しています。いずれも活字本では、部分的に引用するほかなかったものです。そこで、全文をここで読んでいただけるようにしました。
 また、房太郎の親友であった横山源之助が、心のこもった追悼記を2本執筆しており、内容的にも注目されます。

  1. 高野岩三郎執筆 略伝「高野房太郎」(『大日本人名辞書』)
  2. 『大日本人名辞書』は田口卯吉の編集により1886(明治19)年に初版が刊行され、以後50年余にわたって改訂が重ねられた人名事典です。高野房太郎の項目は1926(大正15)年6月に大日本人名辞書刊行会編として世に送られた『新版大日本人名辞書』以降の版に収録されています。なお、最終は1937(昭和12)年刊行の第11版です。この項目の筆者名は記されていませんがこれが高野岩三郎の執筆であることは、「高野岩三郎日記」の1915年8月3日の項に「人名辞彙ニ掲スベキ亡兄ノ略伝ヲ起草シ之ヲ終ル」とあることから明らかです。高野房太郎の全生涯を簡潔に記した貴重な史料です。ただ紙幅に制約のある人名辞書であり、岩三郎の記憶違いなどもあって、そのまま鵜呑みにはできません。
  3. 高野岩三郎「兄高野房太郎を語る」(『明日』1937年10月号、法政大学大原社研『資料室報』No.145、1968年10月に再録)
  4. この談話筆記は、高野岩三郎が、兄の事績が講座派の平野義太郎らによって貶められていることを憤り、残したものです。房太郎のもっとも身近にいた肉親による回想で、貴重な証言です。もし、これらがなければ、高野房太郎の前半生は、ほとんど追跡する手がかりさえ得られなかったことでしょう。それほど長いものではありませんし、読み物としての面白さもあるので、ご一読をお勧めします。
  5. 高野岩三郎「囚われたる民衆」冒頭部分(『新生』第2巻第2号,1945年12月、『かっぱの屁』法政大学出版局,1961年刊に再録)
  6. 高野岩三郎が天皇制廃止をうたう「改正憲法私案要綱」を公表した論稿の冒頭部分で、兄高野房太郎との共通する体験を語ったもの。
  7. 横山源之助「労働運動卒先者の死」(『毎日新聞』明治37年5月4,5日付)
    横山源之助は、「友人高野房太郎君は、支那山東省膠洲湾に於て、肝臓病を以て死せり。」に始まる長文の記事を、2日にわたって『毎日新聞』に掲載した。
  8. 天涯茫々生〔横山源之助〕「高野房太郎君を憶ふ」(『東洋銅鉄雑誌』第1巻第1号)
    横山源之助が、天涯茫々生の名で、自らが編集発行した『東洋銅鉄雑誌』の創刊号に掲載した追憶記。

関連史料一覧へのリンク

  1. 高野房太郎《米国桑港通信》(『読売新聞』掲載)
  2. 高野房太郎がOFTのペンネームで『読売新聞』に寄稿したサンフランシスコ通信
  3. 高野房太郎より弟・岩三郎宛の書簡一覧
  4. 高野房太郎が1890年〜92年にかけて弟に書き送った手紙27通。房太郎の肉声が聞こえる数少ない史料。
  5. Labor Report from Meiji Japan by Fusataro Takano
  6. 高野房太郎がアメリカ労働総同盟の機関誌『アメリカン・フェデレイショニスト』などに寄稿した英文通信。『明治日本労働通信』の原文。
  7. Correspondence between Fusataro Takano and Samuel Gompers
  8. 高野房太郎とサミュエル・ゴンパーズの間に交わされた57通の往復書簡。
  9. Letters addressed to Fusataro Takano
  10. 高野房太郎の友人・知人、あるいはゴンパーズ以外の労働組合指導者らから送られた手紙16通。

高野房太郎年譜

高野房太郎研究の歩み

以下は、『高野房太郎とその時代』を執筆する前に執筆した高野房太郎に関する論稿です。このテーマに関する私の研究の歩みを示すために、発表年次順に掲載しています。

  1. 1959年10月
      書評 ハイマン・カブリン編著 『明治労働運動の一齣──高野房太郎の思想と生涯』(有斐閣、1959年、138+114頁。)
  2. いまから半世紀前、高野房太郎と最初に出会ったのが、このカブリンの著作でした。その時は、自分でこの人物の伝記を書くことになるとは、予想もしていませんでした。まだ駆け出しの研究者で、当時、日本読書新聞の編集部にいた友人稲垣喜代志氏(現在は風媒社経営)のやや強引な依頼によって執筆したものです。初出は『日本読書新聞』1959年10月5日。たぶん原稿料をもらって書いた最初の仕事です。


  3. 1979年4月
     職工義友会と加州日本人靴工同盟会縦書き
  4. 日本労働組合運動の源流となった〈職工義友会〉=サンフランシスコ在住の日本人によって結成された労働団体に関する実証研究。従来の研究が、片山・西川『日本の労働運動』の記述を鵜呑みにし、同会の成立に高野房太郎の関与を否定あるいは軽視して来た点を論破。また在米の靴工の運動についても検討し、さらにアメリカ労働運動の日本に対する影響についても論じている。謎解きの楽しさのある著者お気に入りの論稿のひとつ。
     初出は『黎明期日本労働運動の再検討』(労働運動史研究62号、1979年4月、労働旬報社刊)所収。


  5. 1991年9月
     書評 Stephen Marsland, The Birth of the Japanese Labor Movement:Takano Fusataro and the Rodo Kumiai Kisei-kai
  6. University of Hawaii Press, Honolulu, 1989, ix+271pp. $27.00.初出は『大原社会問題研究所雑誌』第394号、1991年9月。
     なお本稿の英文版は、アムステルダム国際社会史研究所の機関誌International Review of Social History Vol.XXXVI-1991-3に掲載された。

  7. 1993年4月
     高野房太郎の生涯──労働運動離脱の謎を中心に
  8.  従来の高野房太郎研究は、伝記的研究をなおざりにしたまま、その労働組合論、賃金論などに集中してきた。彼の伝記も、労働運動家となった晩年の事実から出発し、その生涯を逆にたどる傾向が強い。しかし、その思想を解明するためにも、その人、その個性を、彼が生きた時代のなかで検討することの重要性を指摘し、謎にみちたその生涯を探ることを試みた論稿。
     初出は『労働運動史研究会会報』No.25、1993年4月。

  9. 1997年7月
     労働組合期成会と高野房太郎
  10. 1997年7月4日、記念事業実行委員会および日本労働組合総連合会の主催によって開かれた《労働組合期成会・日本の労働組合誕生100年記念「期成会から100年 いま、労働運動を考える」》のシンポジウムにおける基調報告。限られた時間のなかでの報告で、論点をしぼりすぎた感があります。





Written and Edited by NIMURA, Kazuo
『二村一夫著作集』
The Writings of Kazuo Nimura
E-mail:
nk@oisr.org


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