一九五〇〜五五年 昭和二五〜三〇年 法政大学との合併後、研究所の財政状態も安定し、最小限度のスタッフもそろい、事業計画にしたがい各種の業務が遂行されていった。事業の主なものは、『日本労働年鑑』第二三集の編集と、産業合理化と労働運動、失業問題、労働者教育等に関する調査のほか、研究所三十年史の編集をあげることができる。後者は、大原研究所が創立いらいたどった三〇年の足跡を記録するもので、この年の春から、久留間所長を中心に、高野岩三郎日記その他を資料として、編集準備作業が開始された。また調査事業の一つとして、旧軍需工業地帯における労働移動に関する実態調査が、経済安定本部の委託により、群馬県太田市(旧中島飛行機工場周辺地区)を対象に実施された。この調査結果は「大原社会問題研究所シリーズ」第五・六集『都市と農村における労働力の移動形態』(五一・五二年)として刊行された。
ところでこの年二月二三日、法政大学総長野上豊一郎氏が死去され、その後任として七月、東京大学経済学部教授大内兵衛博士がむかえいれられた。大内総長の就任は、法大と大原研究所の緊密な結合、その一体化をすすめる上で大きな意味をもつものであった。
さて、大内総長就任後、研究所のあり方として、実質的には法大附設の研究所ではあるが、これを形式的に独立の財団法人とした方が運営上よりいいのではないか、と首脳者の間に意見が一致し、一九五〇(昭和二五)年一一月一日、文部省に認可申請をおこなった。翌五一年一月五日これが認可され、研究所はふたたび財団法人として運営されることになった。新財団法人の寄附行為および当時の役員、所員の氏名は左のとおりである。
財団法人法政大学大原社会問題研究所寄附行為
第一章 総則
第一条 この法人は、財団法人法政大学大原社会問題研究所と称する。
第二条 この法人は、事務所を東京都千代田区富士見町三ノ一法政大学内に置く。第二章 目的及び事業
第三条この法人は、社会問題に関する学術上の研究調査を行い、社会問題の解決に資するをもって目的とする。
第四条この法人は、前条の目的を達成するため次の事業を行う。
一、社会問題に関する学術上の研究調査
二、社会問題に関する図書、資料の蒐集及び利用
三、社会問題に関する各種出版
四、その他前条の目的を達するに必要な事業第三章 資産及び会計
第五条 この法人の資産は、次の各号から成る。
一、この法人設立当初設立者の寄附に係る別紙財産目録記載の財産
二、資産から生ずる果実
三、事業から生ずる収入
四、寄附金、補助金及助成金
五、その他の収入
第六条 この法人の基本財産は別紙財産目録のうち基本財産の部に記載の財産及び理事会の議決を経て繰入れた財産から成る。
普通財産は、基本財産以外の財産とする。
但し、寄附金であって、寄附者の指定のあるものは、その規定に従う。
第七条 この法人の資産は、理事会の議決を経て確実なる方法により理事長がこれを管理する。資産中基本財産である現金の管理は、金銭信託、郵便官署もしくは確実なる銀行の定期預金とする。
第八条 この法人の基本財産の元本は、これを処分し、又は担保に供することができない。
但し、やむを得ない事由のある場合は、理事会の議決を経、且つ、文部大臣の認可を得て、その一部に限り処分することが出来る。
第九条 この法人の経費は、通常財産をもってこれに充て、年度末剰余金を生じたときは、理事会の議決を経て、その全部もしくは一部を基本財産に編入し、又は次年度に繰越す。
第十条 この法人の予算は、毎年度開始前に理事長が編成し、理事会の議決を経て定め、決算は、年度終了後一箇月以内に理事長が調製し、財産目録、事業報告書とともに監事の意見を付けて理事会の承認を受けるものとする。
第十一条 収支予算で定めるものを除く外、新たに義務の負担又は権利の放棄をしようとするときは文部大臣の承認を得なければならない。
一時借入金以外の借入金をなす場合についても又同じである。
第十二条 この法人の会計年度は、毎年四月一日に始り翌年三月三十一日に終る。第四章 役員及び職員
第十三条 この法人に次の役員を置く。
一、理事 五名以上九名(内理事長一名)
二、監事 二名
三、顧問 若干名
四、評議員 若干名
第十四条 理事長は、理事の互選で定める。理事長は、この法人を代表し、業務を総理し、会議の議長となる。
理事長に事故のあるときは、あらかじめ定めた順序により他の理事がその職務を代理する。
第十五条 理事及び監事は、評議員会において評議員のうちから選任する。
理事は、監事を兼ねることは出来ない。
顧問は、理事長これを委嘱する。
評議員は理事会の議決を経て理事長これを委嘱する。
第十六条 理事及び監事の任期は、三箇年とし、評議員の任期は四箇年とする。但し再任は妨げない。
補欠による役員の任期は、前任者の残任期間とする。
第十七条 役員は、その任期が満了しても、後任者が就任するまでは、なお、その職務を行う。
第十八条 監事は、民法第五十九条の職務を行う。
第十九条 この法人は、所長、研究員、書記、その他の職員を置くことができる。
所長は、理事長これを兼務する。
職員は、理事長これを任免する。
職員には、俸給を支給することが出来る。第五章 会議
第二十条 理事会は、定会及び臨時会とし、定会は毎年一回とし臨時会は必要に応じ理事長これを招集する。
第廿一条 理事会は、理事三分の二以上出席しなければ開会することが出来ない。
理事会の議事は、出席理事の過半数の同意をもって決する。
可否同数であるときは、議長の決するところによる。
第廿二条 理事会に出席できない理事は、書面で他の理事に委任して表決することが出来る。
この場合あらかじめ通知した事項については、これを出席者とみなす。
第廿三条 この法人の処理事項のうち、次の各号に該当する事項は、評議員会の議を経ることを要する。
一、理事、監事についての選任
二、寄附行為の変更ならびに法人の解散についての議決
三、その他理事会が附議したことについての承認
前三条の規定は評議員会にこれを準用する。
第廿四条 すべての会議には、議事録を作成し、議長及び出席者二名署名捺印の上、これを保存する。第六章 寄附行為の変更ならびに法人の解散
第廿五条 この寄附行為は、理事会および評議員会おのおの四分の三以上の同意を経、且つ文部大臣の認可を得なければ、これを変更することができない。
第廿六条 この法人は、理事会及び評議員会おのおの全員の四分の三以上の同意を経、且つ文部大臣の許可を得なければ解散することができない。
第廿七条 この法人が解散の場合の残余財産は、理事会の議を経、且つ文部大臣の許可を得て法政大学あるいはこの法人と類似の目的を有する公益事業に寄附する。第七章 附則
第廿八条 この寄附行為施行の細目は、理事会の議決を経て別に定める。
第廿九条 この法人設立当初の理事及び監事は次の通りである。
役員
理事長 久留間鮫造
理事 錦織理一郎 友岡久雄 山村喬 池島重信 中野勝義 宇佐美誠次郎
監事 半田秀一 大原総一郎
評議員(前記理事の外次の各氏)谷川徹三 中村哲 柿原政一郎 宇野弘蔵 半田秀一 大原総一郎 大内兵衛 森戸辰男 笠信太郎 大島清 舟橋尚道
所員
久留間鮫造(所長) 宇佐美誠次郎 大島清 舟橋尚道 斎藤泰明 富塚良三 田沼肇 石島忠 中林倭子 永田利雄 林春子 谷口朗子 鈴木弘 富塚照代
(このうち、久留間、宇佐美、大島、舟橋の各研究員は法政大学との兼任)五〇年度収支決算額(一−三月)
歳入金 八五九、四一二円九〇銭
歳出金 八五九、四一二円九〇銭
また、この年の一一月から一二月にかけ、経済安定本部の委託をうけて、日本鋼管の調査を実施し、久留間所長はじめ全所員がこれに参加した。
一九五一年一月、『日本労働年鑑』第二三集が時事通信社より刊行された。以後、年鑑は一九五六年、代って東洋経済新報社が発行を引きうけるまで、同社よりひきつづき毎年刊行された。なお、四九年三月発刊された『労働資料月報』は今年三月をもって一応終刊となった(これに代って『資料室報』が五三年春から刊行されることになる)。この頃、研究員の間では毎週一回、「貨幣・金融論」をテーマに研究討論が行われた。権田保之助氏は五一年一月五日に死去された。
法政大学大原社会問題研究所五十年史
発行 1970年11月
編・発行法政大学大原社会問題研究所